SONICWIRE

最強の"ガチャ"シンセ『SYNPLANT 2』

LOBOTIX 氏が実践的な使い方を解説

SONIC CHARGE 『SYNPLANT 2』レビュー Presented by LOBOTIX

こんにちは!LOBOTIXと申します。

普段はYouTubeのLOBOTIX CHANNELでDTMが楽しくなるチュートリアル動画を多数アップしているのですが、この度とっても気になっていたシンセ、SONIC CHARGE 『SYNPLANT 2』のレビューをする機会を頂きました。AIを利用した音作りが話題になっていますが一体どんなサウンドが生まれるのでしょうか?

それではいってみましょう!

SYNPLANT 2

シンプラント 2

音声ファイルをAI解析し、「遺伝的アルゴリズム」で音作りする次世代のシンセサイザー

¥25,322

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最強のガチャシンセ

なかなか見慣れないインターフェースの『SYNPLANT 2』。中央に茶色のドット、Seedという”音の種”があり、ここからウニョウニョと緑色のBranch(枝)が伸びています。

この種と枝の伸び方で多様なサウンドが生み出されるようです。うん、どういうことだ!?とにかくやってみよう!

まずは中央のSeedをクリック。すると”植え直し”が行われてBranchがリセットされます。分かりやすいように円形ウィンドウの周辺にある「atonality」、「effect」、「release」のスライダーは下げておきましょう。さらに円形ウィンドウの下部にある「Bulb Mode」スイッチ、これは「layerd」に。ウィンドウの縁がレイヤー選択ボタンになるので中央下方向の一つだけ選択状態にしておきます。

それでは円形の下方向に伸びるBranchをドラッグして伸ばしながら鳴らしてみます。するとサウンドがモーフィングして変化を始めました!Seedのサウンドをもとにランダムに変化していきます。

ここで気に入ったBranchの位置で再びSeedをクリックして植え直し。するとそのサウンドがSeedに置き換わり、Branchを伸ばすことでさらにサウンドバリエーションが生まれます。

基本はこのように、AIによるランダマイズを繰り返すことで無限に多様なサウンドを生み出していく、つまり「次はなにが来るかな…?」と、ゲームのガチャのような感覚でサウンドを作っていくシンセのようです。これはサウンドからインスピレーションを得て曲のモチーフを作っていく筆者にとっては非常に中毒性を感じます!(笑)

フレーズを鳴らしながらランダマイズ

ctrlキー(commandキー)を押してSeedやレイヤーボタンをクリックすると、Seed自体をランダマイズしたりレイヤーごとのBranchの音色変化をランダマイズが可能。そしてlayerdモードでは一つのSeedをもとに12種類のランダマイズされたBranchを使うことができ、それらを重ねて複雑なサウンドデザインができます。

円形の中央にあるサークルをドラッグすると全レイヤーのBranchをまとめて動かせてさらにダイナミックな変化が。フレーズを鳴らしながらこれで試行錯誤すると面白い!

いずれもBranchを伸ばしたり「atonality」や「effect」スライダーをいじっているだけなのですが、適当にいじってこれだけ多様なサウンドが得られるのです!

さらにもう一つ楽しかったのは「Bulb Mode」の「standard」。こちらは12個のレイヤーの音が12音階それぞれに割り当てられ、ドレミ~と弾くと音階によって違う音色が再生されます。この状態にアルペジエイターを使うとIDMのような複雑なサウンドがあっという間にできてしまいます。

実はFMシンセ

さて、これらの音色は画面上部にある「Manipulate Genes」で細かく調整が可能です。ここを見てみると『SYNPLANT 2』は、2オシレーターでFMを利用した比較的シンプルなシンセであることが分かります。

左の遺伝子図のようなものは各ツマミに対応したスライダーのようです。一点だけ気になったのですが、各Branchを編集する際は「standard」モードにして該当するキーを弾いて選択する方法しか無い模様。ここが少しだけもどかしかったです。

とはいえ実際の音作り作業は先程のSeedやBranchのランダマイズがメインなので、そこまで支障はありません。少ないパラメータながらも「adj_bass」などの低域の調整や「adj_clip」など実用的なポイントはしっかり押さえてある印象です。

それにしても、SeedとBranchという設計のおかげでこれだけシンプルなシンセエンジンであんなに多様で複雑なサウンドが簡単に生成できるのですね…すごい!

Genopatchでより狙ったサウンドを生成!

ここまでAIによるランダマイズを楽しんできましたが「なかなかピンと来るSeedが出てこない!」「もっと自分の狙ったサウンドに近づけたい!」と思ったりしますよね。ここで登場するのが今回のバージョンで追加された目玉機能の「Genopatch」です。

これはオーディオファイルをインポートすると、『SYNPLANT 2』がそれを解析してシンセエンジンで再現してくれます。そこから先程のBranchなどを利用して更なるサウンドを無限に生成していける機能です。

wavなどの対応するオーディオファイルをドラッグしてインポートしましょう。歯車型のスタートボタンを押せばストランドというギザギザの線が出てきて、その所々にあるカラフルなドットが生成されたサウンドです。このように、いくつかバリエーションが出てきてストランドの上部にいくにつれてより原音に近くなっていくようです。

ドットをクリックして試聴。気に入ったサウンドを選んでメインの画面に戻ると、それがSeedとして設定されています。FMのシンセエンジンで再現できる範囲なので、完全に一致とはいきませんがなかなかの再現度。そして、なにより前半で紹介したBranchやランダマイズを使ってこのサウンドをさらに発展させていけるのが醍醐味!

レイヤーを使って少しリッチにするもよし、Branchを操作して過激な変化をつけるもよしといった感じで発想を広げてゆくのがとても楽しいです。

以下はシンプルなフォーリーサウンドにBranchを伸ばしたレイヤーを重ねていってます。

こちらは無料のソフトシンセ、Vital Audio「VITAL」で作ったオリジナルのベースサウンドから生成。ランダマイズによって複雑なグリッチジャムが次々と生成されます。(※エフェクトに無償プラグインXFER RECORDS『OTT』を使用しています。)

曲中でオートメーションと組み合わせれば印象的なループが次々と作れます。

筆者は自作のサウンドソースから作るウェーブテーブルやオリジナルサンプルが曲の要になっているので、日ごろからフォーリーサウンドやノイズの収集が欠かせません。『SYNPLANT 2』はその際に非常に強力な味方になるなと思いました。なによりランダマイズで次々と生成されるのが楽しい!プリセットも非常に参考になるものが多く、細かくツマミをエディットするのとは違うサウンドデザインの奥深さを感じます。

というわけで、じっくりと向き合うほどにオリジナルサウンドを追及できる『SYNPLANT 2』。電子音楽に限らず、様々なジャンルでスパイスになるサウンドを作るのに持ってこいだと思います。ぜひチェックしてみてください!

LOBOTIX

(エレクトロニック・ミュージック・アーティスト、 VTuber)

2018年よりDubstep等のベースミュージックを中心にプロデュース。自身のYouTubeチャンネル、LOBOTIX CHANNELではDTMがより楽しくなるような制作チュートリアルを多数アップしている。

ユニークでエッジの効いたサウンドデザインを分かりやすく解説した動画は、DTM初心者をはじめ国内外の実績あるミュージシャンからも好評。海外プラグインメーカーへのプリセット提供や開発にも携わっている。

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