SONICWIRE

ジャンルを選ばずに奥行きや広がりを与えてくれるでしょう。

Presented by SONICWIRE

ロンドンを拠点としサンプル・ライブラリーやバーチャル・インストゥルメントを開発するSONICCOUTURE社。僕もこれまでAbleton LiveのPackとして同社のいくつかの製品を使ったことがありました。それぞれの製品はどれもが独創的かつ一つの楽器に特化されたものが多いのですが、サンプルのプレイバックだけにとどまらずモデリングを駆使し様々なジャンルやシチュエーションでの使用を想定した工夫がなされてます。作曲家、クリエーターより多くの支持を集めているブランドです。

今回ご紹介するのはクワイアに特化したソフト音源『ALL SAINTS CHOIR』。1970から1990年代にクラシック・レコーディングで使用されていたロンドンのオール・セインツ教会で収録されています。

クワイヤはニューロンドン室内合唱団による4セクション(ソプラノ/アルト/テナー/ベース)からなる32人編成です。かなり大規模な収録だったようで、その様子はSONICWIREの製品ページに掲載されてますので是非ご覧になってください。

『ALL SAINTS CHOIR』はサンプル・プレーヤーにNATIVE INSTRUMENTS KONTAKT 6(別売)KONTAKT 6 PLAYER(無償)を採用し、Mac/Windows上でスタンドアローンまたはVST/Audio Units/AAXプラグインとして動作します。

それでは製品のパネル各セクションの役割を紹介しつつ、そのサウンドに触れていきます。

ALL SAINTS CHOIR

オール・セインツ・クワイア

名門レーベルを魅了した、All Saints Churchの空間ごと収めたクワイア音源

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1,627pt

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リバーブで残響を重ねるアプローチとは違う、様々な空間表現が行える。

『ALL SAINTS CHOIR』画面

画面1

『ALL SAINTS CHOIR』画面左上のフェーダーは4つのマイク・ポジションの音量を調整するミキサーです。左から右へClose、Front、Mid、Farへと合唱団からマイクが遠ざかる配置となってます(画面1)。このフェーダーはDAWからのオートメーションにも対応してるので曲中でそれぞれのマイクで距離感に変化をつけることが可能。

画面2

例えばFarで遠くから聞こえる合唱からMid~Closeのフェーダーを徐々に上げていき手前に迫ってくるような音響的アプローチが行えます(画面2)。後述するリバーブのミックス・レベルもオートメーション対応となっており、これらと組み合わせると様々な空間表現が行えます。

画面3

ミキサーの下はサンプル・ロードのON/OFF、レガートのON/OFF、パン設定を行うセクション。サンプルは有効になってるセクションのみRAMにロードされるので、使用しないパートはオフっておけばメモリを圧迫しなくて済みますね(画面3)。

画面4

さらにその下の歯車のアイコンをクリックするとCOG EDIT PANELが現れます(画面4)。ここはモデリングのセクションとなっており、声の立ち上がりやリリースの調整、ピッチベンドなどの様々な効果を加えることができます。『ALL SAINTS CHOIR』のサンプルは全てノン・ビブラート唱法で収録されてますがLFOノブ・RATEノブで声を揺らすことができます。その横のDELAYノブではノートONからビブラートがかかるまでのタイムをms単位で調整が可能。テンポを意識しつつこれを設定すれば、楽曲内で違和感なく自然にビブラートさせることが可能です。面白い使用法として、ATTACKとRELEASEをかなり遅いタイムに設定するとパッド・ストリングスのような演奏ができました。いわゆるリバーブで残響を重ねるサウンド・スケープ的アプローチとは全然違うニュアンスなので、個人的にとても気に入っています。

音と音のつなぎ目が非常に美しく、速いフレーズでもしっかりと反応します。

画面5

画面右上を見ていきましょう。SING DYNAMICS WHEELではベロシティーとは別にダイナミクスの調整が行えます(画面5)。左に回すと高域がカットされていき柔らかい質感となり、右に回していくと力強さが増して倍音も強調されてきます。これは単に音量レベルだけでは出せないニュアンスとなっていて、ストリングス音源のエクスプレッションのようにオートメーションを書き込んでエモーショナルに"歌わせる"ための重要なパラメーターですね。ノブも大きいので視認性にも優れていて非常に扱いやすいと感じました。デフォルトではMIDI CC1、モジュレーション・ホイールにアサインされています。

SING DYNAMICS WHEELの隣のパネルではポリフォニック・モードとレガート・モードの切り替えを行います。唱法でとても重要となるレガートですが『ALL SAINTS CHOIR』は声の音と音のつなぎ目が非常に美しく、速いフレーズでもしっかりと反応します。トゥルー・レガートのアルゴリズムが採用されており、実際にレコーディングされたレガート・サンプルを収録。Poly LegatoにするとINTERVALというパラメーターが現れます(画面5)。この数値はレガートを実行するノートの音間(半音単位)で、この間隔を超えるとレガートされずポリフォニックでの演奏が可能。この機能を使うと例えば左手でコードを押さえハーモニーを歌わせ、右手でメロディーを弾いて単旋律で滑らかに歌わせるなど様々なアイデアが試せます。筆者はコーラス・アレンジでこの機能を活用しています。

画面6

SING DYNAMICS WHEELの下は、アーティキュレーション・スイッチとなっています。A、I、U、E、O、Mと6つの母音をキースイッチで切り替えます。母音それぞれの音量も調整できてアクセントをつけるなど様々なニュアンスを加えられます(画面6)。ここで有効になっている母音のみがRAMにロードされます。

ネーミング通り、オール・セインツ教会内のアンビエンスが体感できるわけです。

画面7

画面8

エフェクト・パネルを見ていきましょう(画面7)。画面左上は3つのスロットが用意されておりドロップダウンメニューより1つのモジュールを選択可能。内蔵エフェクトということで正直オマケ程度のクオリティーだと思っていたのですが、CHORAL、FLAIR、REPLICAなどNATIVE INSTRUMENTS社のプラグインが内蔵されています(画面8)。立体感あるコーラス効果を作り出せるCHORALや、アナログやテープなど様々なディレイ効果を作れるREPLICAなど、『ALL SAINTS CHOIR』との相性バッチリだと思います。これもNI社のエフェクトですがTRANSIENT MASTER、BUS COMPRESSORなどダイナミクス系も充実しています。後段に位置する4バンドのパラメトリックEQと組み合わせると、音源内で高精度な音の作り込みが可能となってます。これはアレンジからミックス段にかけて非常に助かっています。

画面9

画面左のSPACEはIRリバーブ・モジュールとなってます。ドロップダウンメニューよりIRの種類を変更できます。リストの上から8つは本製品のサンプル収録の際にオール・セインツ教会内でのアンビエント・マイクでキャプチャーされたIRとなってます(画面9)。実際に使ってみると合唱のサンプルと調和して、臨場感と奥行きのあるリッチな響きが聴けます。『ALL SAINTS CHOIR』というネーミング通り、オール・セインツ教会内のアンビエンスが体感できるわけです。

今回、『ALL SAINTS CHOIR』のデモソングとして僕のやってるアコトロニカ・ユニットCojok(コジョ)の楽曲、「Flag Of Vanitas」をアレンジしました。アコースティック、エレクトロ、シューゲイズの要素を融合させた曲です。楽曲の前半ではストリングス、シンセパッドのパートをメインボーカルと絡むようなアレンジで『ALL SAINTS CHOIR』に歌わせています。母音をキースイッチで切り替えつつ、SING DYNAMICS WHEELのパラメーターをオートメーションで細かく書いています。後半は元々大編成のコーラス隊のボイスが壮大に広がる曲なんですが、それを『ALL SAINTS CHOIR』で歌わせてみました。原曲の生コーラスに負けず壮大になりました。生歌だけでは出せない世界観になったと思います。是非聴いてみてください。

『ALL SAINTS CHOIR』デモトラック

『ALL SAINTS CHOIR』は歴史的な背景などテーマとする強い個性をもったクワイヤ音源ではないので、CM、ゲーム、劇伴はもちろん、ポップスやロックでも使えると思います。サンプルも非常に丁寧に収録されていて、マイクごとの嫌な帯域のピークもありません。ジャンルを選ばずに様々な用途でトラックに奥行きや広がりを与えてくれるでしょう。是非ご自分のKontaktライブラリーに加えてみてください!

ALL SAINTS CHOIR

オール・セインツ・クワイア

名門レーベルを魅了した、All Saints Churchの空間ごと収めたクワイア音源

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阿瀬さとし(Cojok / Smash Room)
作曲家/マニピュレーター/ギタリスト

2006年アコトロニカ・ユニットCojok(コジョ)結成。2010年、音楽プロデューサー佐久間正英氏に見いだされ、氏主催のレコード会社より作品をリリース。その後はタイムドメインスピーカーを用いた10.2chサラウンド・コンサートの主催、サウンド&レコーディングマガジンによる企画「Premium Studio Live Cojok+徳澤青弦カルテット with 屋敷豪太、根岸孝旨、権藤知彦」に出演。そこから頭角を現し、数多くのCMや劇伴などの作編曲とギター演奏を担当。2019年は映画「おかえり、カー子」(湯浅典子監督、小島梨里杏主演)の音楽を担当。主題歌を飛澤正人氏が3Dミックスを手がける。2020年はポカリスエットCM「ポカリNEO合唱 ドキュメンタリー完全版」篇の音楽を担当。最新の活動は自身のユニットCojokと岸利至、酒井愁からなるユニットTWO TRIBESとのコラボレーションによる新作を制作中。

Cojok Official Site

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