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全人類対応型のソフトシンセが『AVENGER 2』
完璧な進化で文句なし。

Vengeance Sound『AVENGER 2』レビュー by マイナスP(ワンダフル☆オポチュニティ!)
はじめに

こんにちは。メインソフトシンセは『AVENGER』のワンオポのマイナスです。

最強ソフトシンセと名高い『AVENGER』ですが、今回Ver2になってより最強になって帰ってきました。どこが最強になったか。僕が個人的に気に入った4つに絞って、今回もテンション高めでお送りします。

AVENGER 2

アベンジャー 2

更なる進化を遂げた、万物を創造する万能型“シンセ”音源

¥41,184

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1. よりリッチになった出音

クールな見た目になったこともさることながら、出音がブラッシュアップされている印象を受けました。大きな方向性はVer1から同じですが、超低音の解像度が上がっているような印象。

▲見た目から良い音しそう。Ver1からUI変更はほぼないのでそのまま使える

Ver1では、デフォルトのフィルターは「ONEPOLE LPG」だったけど、「ANA12LP」というアナログ系フィルターがデフォルトになったところから察するに、『AVENGER 2』はよりアナログシンセに近い鳴り方を目指しているのでは…などと推測。

クリスピーな音が得意な印象があったVer1から、歯の奥で感じるようなまろっとした、ふくよかな音もカバーできるようになりました。マジで他のソフトシンセ要らなくなっちゃいますな…

フィルターの種類も増えたし、LFOのカスタマイズができるようになったし(待ってた!)、波形も増えたし、波形の手書きもできるし、以前のVer1のレビューでも言った超強力なドラムもさらに増えたし、ループもアサインできる。

  • ▲カスタマイズできるLFOセクション。数も4つから5つに増えた

  • ▲Factory2の項目が今回追加された音色。ループ素材もスロットインできます。

「でも、 そんなに盛り盛りだと重いんでしょう?」

はい、 むしろ軽くなってます。 マジすごくない?

シンプルな波形で作り始めて後で作り込みたくなるときってありますよね。「とりあえずビール」 みたいなノリで『AVENGER 2』から始められる軽快さを感じましたね。

2. 使いやすいグラニュラー、 サンプラー

グラニュラーシンセってちょっとわからんわっていう人多いと思うんですけど、乱暴な言い方をすると「サンプラーの高機能再生ヘッドがいっぱいあるやつ」 がグラニュラーシンセってやつです。

『AVENGER 2』のグラニュラーシンセサイズは、下の波形エディタ画面に対して、リアルタイムにPosition、Grainの動きなどがグラフィカルに表示されるので、理解を深めるのにもとても向いていると思います。楽しいよ。グラニュラーシンセ。

▲赤い点が再生点。実際グラフィカルに動くからどんなシンセサイズなのか内容がわかりやすい。

で、ほとんどのパラメータがモジュレーションできるし、エディター内のテンプレートを使えばすぐに別のモジュレートもできます。このテンプレートがすごいツボを抑えててですね…VENGEANCEのイケてるところだと思ってます。かっこいいのがいっぱいあるんよ…たまらんです。

▲グラニュラーエディターのテンプレート。画像では30までしか写ってませんが80まであります。

のちに紹介する音源では、イントロのパッドがグラニュラーの音です。ルート音のみでも動きのあるパッドが作れました。こういう感じのアンビエントっぽい音が得意。ただ、使い方はセンス次第なので、面白い使い方があったらどっちが面白い音かバトルしましょう!声素材とか入れてもクールよね。

▲サンプラーにオリジナルの素材として鏡音レンのラップをインポートした。

このパッド音は、『AVENGER 2』に入っていたMellotron系の波形を使っていますが、オリジナルの素材もドラッグ&ドロップでインポートできます。これはサンプラーも同じです。サンプラーもいいのよ…新機能と相性よすぎる…!というわけで、次の項目に進みます。

3. アルペジエイター × ランダマイザー × クオンタイザー = 無限の可能性

タイトルに挙げたこの3つの“スパイス”により『AVENGER 2』は、よりイケメンに進化したっ…!くっ…。

「SSD-GIRL」という自分達の曲の鏡音レンのラップ部分をサンプラーに入れて、アルペジエイターとランダマイザーとクオンタイザーで参考音源を作りました。一個ずつ見ていきましょう。

▲参考音源の素材として使用された楽曲

アルペジエイター

  • RATCHET(ラチェット/切り刻み)ができる。任意のノートを2-8分割に切り刻むことができます。つまりそこのノートだけリピートする。ベロシティパターンも7つあるし、ラチェットひとつずつにノートオフセットをかけられるので、アグレッシヴな音階のフレーズがつくれる。
  • イケてるARPテンプレート(VENGEANCE印)がある。
  • ▲アルペジエイターのラチェット設定画面。様々なスタイルが選べる。

  • ▲ラチェットごとにノートオフセットやボリューム設定も可能。

ランダマイザー

  • アルペジエイターに内包される機能で、ノート、休符、ノートの長さ、オクターブ、ベロシティ、ラチェット、タイ、それぞれの発生率を指定できます。ここまででも十分すごいんだけど、さらにAUTO DICEが最高!一周ごとにランダムで内容が変わるんだけど、ちゃんとエディター内のノートの内容が変わるから、「今のがいい!気に入った!」ってところで、画像のAUTO DICEを外せばFIXできる。AUTO DICEが入ってるかぎりランダムシードが生成され続ける(シード表示もある)
  • イケてるランダマイザーテンプレート(VENGEANCE印)がある。

▲Auto Dice。ランダムシードが生成されているのがわかる。

クオンタイザー

  • モジュレートできまくる!ON/OFFまでできるのなんて今までにあった?ピッチ、oct、グライド、トリガータイプも。
  • 4スロットある。モジュレーション可能。
  • スケールテンプレート37個もある。

▲青枠がクオンタイザー。黄枠がランダマイザー。一目見て使えるグラフィックがGood!

はい、最高です。で、手書きLFOとかエンベローブのモジュレーションソースも豊富だから、例えばクオンタイザーのON/OFFをサンプル・ホールド(RANDAM SQUARE)でモジュレーションしてランダムに1つの音階しか出ないようにするとか、ノブタイプのMIDIコントローラをPitch Fullパラメータにアサインして駆け上がりフレーズで曲のフックに使うとか…アイデアは止まらんですね。

っていうか、クオンタイザーとか思考の方向性がモジュラーシンセだな、こりゃ。でも、この機能全部をモジュラーで組もうとしたらいくらかかるんだ、『AVENGER 2』安いな…っていうのは完全に余談ですね。

4. トレンド感のあるエフェクトが追加

Ver1でもそうでしたが、エフェクトって音作りにおいて重要だな、って再確認できるようなFXがいっぱいありました。その中でも大好きなエフェクトを箇条書きで紹介します。

BIT BITE

ビットクラッシャー系のエフェクト。これ何がいいかっていうと、テンプレートが57個もあるんです。ビットクラッシュだけでやで?logic 10.8で8つだね?この量感伝われ。しかもビットレートをモジュレーションできる!

▲FXスロット「BIT BITE」のテンプレートを開いたところ。たくさんあります!

Q4NTUM FX

高機能な4マルチタップディレイ。各タップにシーケンス・モジュレート可能な3つのFXスロットでディレイ音を加工。フィルター、ドライブ、MOD系、PANに加え、オクターブ、スタッター、リバース、KILL FBの主役級が入ってて、楽曲のフィルインや「ここはちょっと作り込んだ音を仕込みたいぜ」 みたいなところで使えそう。

エディター画面内の波形小窓も、ちゃんと波形が変化するのが楽しい!そして、お決まりのいけてるテンプレートがめっちゃある。

▲Q4NTUM FX。高機能4マルチタップディレイ。

RUTA VERB

シマー系のリバーヴ。シンセとの相性抜群の空気感で最高。ちょっとデジタル臭くなりがちなシマー系ですが、どこかふくよかで温かみある感じがします。Abyssタイプ、すごいうっとりする。

ドラムトラックのBDのシーケンス信号がすでにサイドチェインとしてきているので、SC MIXのパラメータを上げればダッキングできる。

▲RUTA VERB。サイドチェインMIXの項目に既にSeq.BDがアサインされている。

MINI-CHAIN(Ver1からあったエフェクト)

サイドチェイン信号なしにサイドチェインコンプをいれたみたいな音をつくれるFX。地味に便利。RUTA VERBと同じくBDトラックのシーケンストリガーでダッキングできるのがいい。これは本当に便利です。

シーケンスのトリガーで動くってことは、オーディオでトリガーするより鋭く動くから好みなんですよね。で、プリセットだけで28個あるところから、この圧倒的な量感が伝わ(以下略)

▲MINI CHAIN。こちらもドラムキックに合わせて作動するようにアサイン済み。

『AVENGER 2』を使ってつくってみた。

ワンオポの素材を使ってワンフレーズつくってみました。ルーティーンもできるだけ書いてみました。

[ イントロ ]

ドラム

  • 新しく追加されたドラム音色をエディット
  • パートごとにFX COMP MultiBand DISTなどで処理

ボカロ/ラップサンプル

  • サンプラー
  • クオンタイザー(Pitch 1octをS+H LFOでMod)
  • アルペジエイター+ランダマイザーAuto DiceでラチェットとNoteをMod

パッド→グラニュラーシンセ

  • PositionをLFOでMod
  • FX RUTA Verb

[ リフ ]

コード

  • Saw 4-Poly VNTG LP24(Filter)
  • FX Q4NTUM+Chorus+VINYLIZERで空気感を

ベース

  • Sine+Saw
  • カスタムLFOでFMモジュレーションで3拍目近辺にうねりを出す
  • Chorus、MINI CHAIN(BDトリガー)

リード

  • Squre波形+クオンタイザー(Minor)
  • ピッチモジュレーションで1oct UP+2oct UPでピコピコさせる(テンプレートのものを使用)
  • FX BIT BITEでビットレートにLFOでモジュレーション
さいごに

『AVENGER 2』には、まだまだ紹介しきれてない機能が山ほどあります。スペクトルグラニュラーのとことか、追加されたOSCとか、ドラムスロットにドラムループ(182種類のドラムキット、182種類のドラム・シーケンス、1,500種類のドラムループが収録!)が読み込めるとか。

しかもPCへの負荷が軽くなってるとか…。天才すぎるだろ…みんな絶対アプデしたほうがいいぞ…。

お手軽にかっこいい音を探してる人にはプリセットで、キテるサウンドを作り込みたい人には多機能性で、と全人類対応型のソフトシンセが『AVENGER 2』。完璧な進化で文句なし。恐れ入りました。

AVENGER 2

アベンジャー 2

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マイナスP(ワンダフル☆オポチュニティ!)

2009年からじーざす、マイナスの二人でサークル活動開始。

じーざすの持ち味である8bitサウンド+αにコミカルな歌詞を合わせた楽曲で、

国内外から支持を集める。ゲームや様々なアーティストに楽曲を提供。

ミックス、マスタリングはマイナスが担当。

代表曲:

「リモコン」「しんでしまうとはなさけない!」「ぼうけんのしょがきえました!」

「にっこり^^調査隊のテーマ」等

YouTube / OFFICIAL WEB / Twitter

【鏡音リンレン】リモコン【MV】/ Remote Control

【鏡音リンレン】しんでしまうとはなさけない!【MV】/ Shindeshimautowa Nasakenai!

【鏡音リンレン】ぼうけんのしょがきえました!【オリジナルMV】/ Bouken No Sho was deleted

【鏡音リンレン】にっこり^^調査隊のテーマ【ワンオポ/OriginalMV】/ Niccori^^ Survey Team Theme

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